標準仕様者(案)

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「工事の仕様書を作成するための参考資料」として,特許工法である「N&H強制圧密脱水工法」(以下,高真空N&H工法という)における,特殊な材料・装置,真空設備の組立て,気密性の確保,動態観測,改良地盤の品質評価,「品質管理基準の策定」,「品質管理目標」,盛土の安定管理,特異地盤の取扱,などに関わる 標準仕様書を提示します。

設計・積算・工事発注・工事管理などに,ご活用ください。
2004/12/10 真空圧密技術協会

高真空N&H工法  標 準 仕 様 書 2004/12/10


1. 適用範囲


この標準仕様書は,浚渫に伴う土性改良を除き,高真空N&H工法における「真空盛土載荷方式」および「真空単独載荷方式」の一般事項を取扱うものとする。

ただし,この標準仕様書と異なる仕様の適用は,高真空N&H工法に堪能な技術者の判断によらなければならいものとする。


2. 施工計画書


施工計画書には,次項の内容を含むものとする。

@ 真空駆動装置の性能,施工区画(改良ブロック)割,施工配管計画,品質目標

A 動態観測 (現地計測)計画,計測値の活用手法,安定管理・品質確認の手法

B 周辺への影響とその対策


3. 敷 砂


敷砂(サンドマット)は厚50cmを標準とする。ただし,軟弱地盤の表層部が良好であり,施工時期が雨季でない場合などは,敷砂を用いないことができるものとする。なお,敷砂を用いない場合には表土を残し,トレンチなどによる表層排水を行うものとする。

敷砂は,プラスチックボードドレーン(鉛直ドレーン)の打設,水平ドレーンの敷設,鉛直ドレーンと水平ドレーンの接続,排気・排水管類などの敷設,気密シートの接合・気密性などに障害となる泥・石・突起物・異物などの混入や泥濘化がない材料とし,均一かつ連続した層を形成できるように,注意深く施工するものとする。

なお,表層部の軟弱な地盤では,敷砂厚が50cm以上になることが多いことから,シート埋め込み部分からの漏気防止,砂の撒きだしにおけるマッドフローを防ぎ,敷砂の厚さが均一になるように,土木安定シートを敷設するものとする。


4. 鉛直ドレーン,水平ドレーン,排気・排水管,気水分離タンクなど


鉛直ドレーン(プラスチックボードドレーン)および水平ドレーンは,プラスチック樹脂と特殊フィルターで構成され,真空圧が作用した軟弱地盤中において,沈下や変形に追随し,かつ高い透水能力を維持し得るドレーン材とする。

真空圧のもとで排気・排水を効率よく行うため,管類は沈下や変形に追随でき,VP−65相当の性能があり,有孔集水管は特殊フィルターを巻付けたものとする。

また,水と空気を分離し,真空圧を効率よく鉛直ドレーンに伝送するための気水分離タンクは,沈下形状を考慮した上で効率よく排水できる位置に設置するものとする。


5. 気密シート,保護シート


気密シートは,耐候性に優れ,漏気しにくく,地盤などの凹凸に馴染み,沈下や変形に耐え得る伸長性があり,破損時に補修が容易で,接着性に富んだ,気密性の高い積層構造の材料とする。

保護シートは,気密シートの下に敷設し,減圧に伴う気密シートの破損を防ぎ,通水・通気性のある材料とする。なお,気密シートに接する盛土材が気密シートを破損する恐れのある場合は,気密シートの上にも保護シートを敷設するものとする。


6. 真空駆動装置


真空駆動装置は,平均真空載荷圧 70 kN/u 以上を長期間にわたって持続できる装置とする。

真空駆動装置の運転管理には,気密シート下で改良域の減圧状況(真空載荷圧)を継続して監視し得る負圧計2個以上,気密シートの上で改良域の地表面沈下を継続して計測し得る沈下計2個以上,排水量を継続して計測し得る流量計,また排水の水温を継続して計測し得る温度計などを装備した計測管理装置を用いる。

ここで言う真空載荷圧とは,地盤改良に必要な気密シート下の真空圧(kN/u)をいう。


7. 真空設備の組立て


真空設備は,対象施設の機能に耐え得る品質の地盤に改良するため,鉛直ドレーン・水平ドレーン,排気・排水管,気水分離タンク,気密シート・保護シート,真空駆動装置,計測管理装置,動態観測(現地計測)の計器類,などを一体化したシステム装置として,改良地盤の品質を確保し得る平均真空載荷圧 70 kN/u 以上を継続できるように,真空圧密装置として組み上げなければならないものとする。


8. 気密シートの接合,端部処理


気密シートの接合および端部処理は,地盤改良に必要な真空載荷圧に耐え得る気密性を保持し得るように確実に施工するものとする。

気密シートの端部処理にあたって,減圧によって気密シートを破損する恐れのある突起物・廃棄物・ガラ・異物・地下排水溝などや,漏気の原因となる砂礫層などが,気密シート埋込み部の地層に存在しないか,注意深く観察するものとする。それらがある場合は,それらに適切に対処しなければならないものとする。

端部処理にともなう埋戻しは,粘性土で行い,気密シートを損傷しないように慎重に行い,周辺部への変状や漏気の原因とならないように丁寧に施工するものとする。

真空駆動装置運転中は,端部処理部分からの漏気の有無を逐次確認するとともに,漏気が確認された場合には,補修を行う。


9.真空載荷期間


真空載荷期間とは,平均真空載荷圧70kN/u 以上を維持しつつ,真空設備を本格的に稼動し続けて,地盤改良を行う真空駆動装置の運転期間をいう。

真空載荷期間の最小は,@真空載荷盛土方式の場合,盛土前載荷期間(20日)・盛土時載荷期間(盛土日数)・盛土後載荷期間(軟弱層厚15m以上で沈下が長引くケース90日,前記を除く軟弱層のケース60日)の合計日数(総載荷期間),A真空単独載荷方式の場合,沈下が長引く軟弱層ケース90日,前記を除く軟弱層のケース40日などとする。(詳細は,高真空N&H工法 マニュアル 参照)


10.設計変更 


10.1 鉛直ドレーン打設長,端部処理位置の変更


施工前に行った調査の結果,設計打設長で施工を行うと圧密対象層下部に存在する帯水層に着底する可能性がある場合には,帯水層深度より1〜2m程度上方で打ち止められるように打設長の変更を行う。

また,端部処理部分に砂層が確認された場合には端部処理位置の変更を行うか,余掘りを行い粘性土で埋め戻すなどの処理を行う。

なお,鉛直ドレーン打設延長および改良域の増減に関わらず,設計変更の対象とする。


10.2 真空載荷期間の延長


設計時に設定した真空載荷期間内に「品質管理基準」あるいは「品質管理目標」を達成できないと現場計測などによって判断され,サーチャージ盛土の検討を行った上で真空載荷期間の延長が望ましい場合には,引続き,「品質管理基準」あるいは「品質管理目標」に到達するまで真空設備を稼動させることとする。

延長運転期間は設計変更の対象とし,その費用は真空駆動装置の運転・管理および計測管理などに関わるすべての項目とする。


10.3 サーチャージ盛土の追加


設計時に設定した真空載荷期間内に「品質管理基準」あるいは「品質管理目標」を達成できないと現場計測などによって判断され,放置期間等の現場条件からサーチャージ盛土の追加が効果的であると判断された場合には,サーチャージ盛土の追加を行う。

この際に,サーチャージ盛土に関するすべての事項を設計変更の対象とする。


11. 動態観測,改良地盤の品質評価,「品質管理基準の策定」


高真空N&H工法では,当該地の類似地盤における試験工事やパイロット施工などに基づいた「品質管理基準」が当該工事の仕様書などで明らかになっている場合を除き,改良地盤の品質を確保し確認するために,試験工事やパイロット施工を行い,「12. 「品質管理目標」,真空駆動装置の停止」・「13. 盛土の安定管理」などに必要な動態観測および品質確認調査を行うのを基本とする。ここで言う「品質管理基準」とは,当該工事の仕様書などで規定している管理基準をいう。「品質管理目標」とは,仕様規定していない場合における技術協会としての推奨目標をいう。

それぞれの施設機能に見合った「品質管理基準」を策定するために,品質確認調査を別途実施するものとする。品質確認調査とは,改良地盤の品質を評価するために土質調査を行い,その成果や動態観測結果・施工記録などを解析し,「品質管理基準」を策定する解析業務等をいう。真空載荷後における特有な土質調査には,ロータリー式二重管サンプラー(デニソン式サンプラー)による代表的な軟弱層の乱さない試料採取,圧密試験・三軸圧縮試験(UU) ,孔内水平載荷試験,電気式静的コーン貫入試験などがある。品質確認調査には,一般的な軟弱地盤における調査内容に,これらを追加するものとする。


12. 「品質管理目標」,真空載荷の停止


真空載荷の停止は,「品質管理目標」を満たした時点とする。

この時点とは,「12.1予測の方法」「12.2 間隙水圧計・層別沈下計」などの現地計測や土質調査によって,@改良対象層の圧密度が100%になったと技術判断した時,A施設の供用開始までに施設機能を満たすと技術判断した時,B横方向地盤抵抗の増加,掘削法面の安定,掘削土のトラフィカビリティ向上,減容化などの「品質管理目標」を満たすと技術判断した時,などのいずれかに該当する場合とする。

ただし,「品質管理基準」が当該工事の仕様書などで明らかになっている場合は,「12. 「品質管理目標」,真空載荷の停止」を適用除外とする。


12.1予測の方法


予測の方法は,@間隙水圧計による軟弱層ごとの計測値(単一層厚が10m以上の場合,5m毎に1箇所)に基づいて,過剰間隙水圧の消散度合いを予測する,A層別沈下計による軟弱層ごとの計測値(単一層厚が10m以上の場合,5m毎に1箇所)を用いた双曲線法で,最終沈下量を軟弱層ごとに予測し,軟弱層ごとに残留沈下量を求めるなどに基づく総合判断によるのを標準とする。


12.2 間隙水圧計・層別沈下計


間隙水圧計の設置は,安定や沈下で問題となる,@過剰間隙水圧の消散が遅いため,強度増加が遅く,残留沈下が生じやすい軟弱層(圧密係数 Cvの小さい有機質粘土や厚い粘土層など),A塑性流動が大きく,過剰間隙水圧が高くなる高有機質土層(ピート層),B沈下量の多い主な軟弱層,などの中間部がよい。

間隙水圧計は電気式とし,フィルターは空気侵入値 200 kN/uほどのセラミックフィルターとする。その受圧部は,減圧による影響を避けるため,脱気水で満たすものとする。

残留沈下量が主要な「品質管理目標」となる場合,層別沈下計は,沈下特性によって高有機質土層(ピート層)・有機質粘土層・粘土層・下部粘土層などのように軟弱層を区分し,沈下量の大きい主な軟弱層の上面における沈下を測定できるように設置するのがよい。


12.3 用途による品質管理の違い


改良深度が6〜8m以下であり,盛土高6m以下の工事用道路など,掘削法面の安定,支持力の強化,減容化,掘削土のトラフィカビリティ向上・ハンドリング改善,などの用途で,支障が周辺に及ばない場合,類似地盤における試験工事や施工実績などから「品質管理目標」を明らかにして,技術判断による品質管理ができるものとする。

残留沈下が「品質管理基準」あるいは「品質管理目標」である場合は,施設の機能維持に支障となる改良対象層の沈下を終えるのがよい。この場合は,真空載荷の停止後から施設の供用開始などまでの期間に進行する盛土荷重やサーチャージなどによる沈下,施設における保守の難易などを考慮できるものとする。


13. 盛土の安定管理


盛土の安定管理は過剰間隙水圧および水平変位に基づいて盛土速度を制御することで行い,日平均盛土速度は 20cm/dayを超えないものとする。盛土の開始は運転開始から20日目以降を標準とする。


13.1 過剰間隙水圧


盛土中の最大過剰間隙水圧は,セイフティ・ポイントを超えないのが望ましい。

ここで言う,過剰間隙水圧とは,静水圧からの増加水圧を言い,沈下による補正などをしていない測定値(kN/u)とする。最大過剰間隙水圧とは、それぞれの時点における各軟弱層の過剰間隙水圧のうちで,最大の水圧を示す軟弱層の測定値をいう。

セイフティ・ポイントとは,それぞれの盛土時における真空載荷圧の最小値の絶対値(kN/u)をいう。なお,間隙水圧の測定方法は,12.2 項によるものとする。

13.2 水平変位


盛土中における1日当たりの盛土法尻の水平変位量 Δδ/Δt は,変位しないのがよいが,改良域から外側への変位 +15〜20 mm /day 以下 を目安とする。累計水平変位量は,気密シートを埋設した当初の位置(端部)から外側へ(気密シートが伸長する方向へ)+30cmを超えないのがよい。


13.3 水平変位の最少化


周辺への影響を特に制御して,水平変位(地中傾斜計による計測値)の最少化を目指す場合などには,本運転期間20日以内に盛土を開始できるものとする。この場合の安定管理は,水平変位の最少を目指して盛土速度を制御し,盛土中の最大過剰間隙水圧(kN/u)が盛土荷重の50%を越えないものとする。ここで言う盛土荷重とは,盛土の湿潤重量と盛土厚さの積(kN/u)をいう。


14. 特異地盤の取扱


気密性を阻害する特異地盤では,「7. 真空設備の組立て」および「9. 真空載荷期間」,「10.2 真空載荷期間の延長」,「13. 盛土の安定管理」,真空載荷圧などの規定に関わらず,試掘・撤去・置換え,客土,残土処理・廃棄物処理,保護シートの追加・再施工,止水材などの注入,サーチャージ,真空駆動装置の増設,止水矢板等による締切などの対処に必要な事項およびその費用などについて協議し,変更できるものとする。

ここで言う,特異地盤とは,減圧によって気密シートを破損する恐れのある突起物・廃棄物・ガラ・異物・地下排水溝などが存在する地盤や,漏気性の著しく高い砂礫地盤等,湧水量の著しく多い地盤,被圧性の高い地盤など,気密性の確保がきわめて困難である地盤をいう。

以 上